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zoom RSS 『眉山』

<<   作成日時 : 2007/06/15 00:17   >>

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徳島を舞台にした、母と娘にまつわる話。
眉山って何のこと?と思っていましたが、そういう名前の山が徳島にはあるのですね。初めて知りました。しかもロープウェーがあって、上まで登ると徳島市内が一望でき、なかなか素敵な場所でした。


東京で旅行会社に勤める咲子はバリバリのキャリアウーマン。32歳になるが結婚にも興味なく、毎日仕事をテキパキこなしていた。
ある日、徳島の実家に1人で住む龍子が入院したと連絡があり、慌てて病院に駆けつける。ところが、龍子は何事もなかったかのように気丈に振舞っていた。
出身が東京でチャキチャキの江戸っ子である龍子は、ハッキリと物を言い後腐れなく人との関係を築いていく性格。回りから頼りにされることが多く、病院でも人気者だった。娘の咲子としては、自分を必要とされていないような気がして、龍子の自分で何でも決断するところに反発を感じつつ寂しさもあった。
担当医から呼び出され、知らされたのは龍子の末期ガン。重い知らせに咲子は愕然とする。本人に話した方がいいのか、どう話せばいいのか、不安で胸がいっぱいになる。


龍子役の宮本信子の演技は素晴らしかったです。『そうなのかい?』というような江戸っ子らしいハキハキとした口調で聞いててとても気持ちがいい。時折出てくる人形浄瑠璃のセリフも見事なものでした。
龍子の最初のシーンは、看護士を叱るシーンです。『そこは痛いといってるだろう?』という感じでもっともな言葉が続きます。看護士はカチンときたようですが、あれだけハッキリ叱られれば、嫌味が無くて逆に素直に聞いてしまいそうです。
その後看護士は、大沢たかお扮する小児科医の寺澤に叱られた事を愚痴ります。『ベッドが空くまで頑張るかー。』と看護士が言い、『そうそう』と励ます寺澤。しかしそれを龍子と咲子に聞かれてしまい、咲子に『ベッドが空くってどういう意味?』とものすごく怖い顔でにらまれます。
その時の咲子が、なんだか龍子にそっくりで、演技だけれどほんとの親子のように見えて少しおかしくなってしまいました。


看護士を怒鳴った時に初めて顔を合わせた寺澤と咲子だったが、母の病気で不安な日々を送る咲子を次第に寺澤が支えるようになる。
2人でロープウェーに乗り、登った眉山で、咲子は母が献体を希望していることを寺澤から初めて聞かされる。献体とは、死後自分の遺体を解剖学の実習のために提供すること。龍子がまた1人で勝手に決断した事に咲子は複雑な思いを胸に抱く。その後も度々寺澤は咲子と一緒の時間を持ち、龍子に対してどう接したらいいのか悩む咲子を助ける。医者と患者の家族という関係だったのが、徐々に男女の関係に変わっていく。

龍子のガンは全身に転移しており、相当つらいはずなのに、病室では辛そうなところは一切見せない。それどころか、咲子に東京に戻る事を勧める。『仕事は女の舞台』それが徳島一の料亭を切り盛りしていた龍子の口癖だった。
ある日、咲子は顔馴染みのおじさんから、風呂敷包みを渡される。龍子から死んだら咲子に渡してくれと言われて預かったものだという。包みを受け取り、家に帰ってからおそるおそる開ける。中からは、死んだと教えられてきた父に関わる品々が出てきた。毎年咲子の誕生日に届いた手紙、まだ咲子が産まれる前に大恋愛をしていた頃の手紙、そして父の映るたった一枚の写真。その写真を見て、咲子は小さい頃会ったことのある人だと想い出す。


龍子と咲子の父は不倫関係でした。結婚し東京で開業医をしていた父は、妻と別れ龍子と再婚することはできませんでした。徳島はその父のふるさと。龍子は、2人で一緒に登った眉山を父だと思って、ここで暮らしていこうと決心したのです。
父について、父と母のことについて、何も聞かされてこなかった咲子は、手紙を読んで全てを知ります。大恋愛の末、身を引くしかなかった母の気持ちを知り、咲子の母に対する思いも変化していきます。
いくら好きな人のふるさととはいえ、全く知らない土地にやってきて暮らそうなんて簡単には決心できません。すごいなぁと龍子の強さに感心しつつ、そこまで好きになれる人と出会えるなんていいなぁと羨ましく思いました。


一度東京に戻った咲子は、手紙の差出人に書いてある住所を頼りに父に会いに行く。辿り着いた医院で、咲子は看護士に勧められるがまま問診表を書き、診断の順番を待つ。やがて名前が呼ばれ、診察室に入るとそこには白衣を着た父の姿が。言葉が出てこずただ見つめるだけの咲子を見て、父は思い出したように問診表を確認する。『出身はどちら?』『・・・徳島です。』その言葉で父は咲子だと確信する。
そばにいる看護士に気付かれないように母の様子を探る会話が奥深くてジーンときました。病気であることをさりげなく知らせようと言葉を選ぶ咲子の話し方も心に染みます。最後に父は「もうじき踊りの季節ですなぁ。」と阿波踊りのことを言います。「よかったらいらして下さい。」という咲子のすがるような目が印象的でした。


龍子が倒れたと連絡が入り、咲子は徳島へ急行。幸い一命は取り留めたものの、自力で歩くのも困難なほど龍子の病状は悪化していた。大好きな阿波踊りを最後になんとか見せてあげたい、咲子の思いが担当医をも動かし、龍子は阿波踊りを見に行くことになる。久しぶりに着物に袖を通し、寺澤も付き添い会場に向かう。街はお祭りの熱気でいっぱいだった。


阿波踊りのシーンは全部エキストラだそうで、本当のお祭りよりは多少盛り上がりに欠けるそうですが、今までちゃんと見たことが無い私からみればかなりの迫力でした。この阿波踊りのシーンは結構長めです。1万数千人の地元の人が参加したとかで、みんなで協力して作り上げた感じがするところがまたよかったです。

母と娘、大事だからこそなかなか本当のことを言えずに生きてきて、余命を宣告されてもなかなか自分からは素直に思うことを話せません。母の一番言いたかった事は、死後献体のメッセージカードで咲子に伝えられます。
最期が近付いても今まで通りであろうとする龍子の姿や、不安を胸に抱きつつも次に共に歩む人を見つける咲子の姿は、死だけを変に強調していなくてよかったです。人が最期を迎えるとしても時間は変わらず過ぎていくし、そういうときこそ、回りの人達の中では色々なものが動き出すのではないかと思いました。

観客の年齢層が高めでしたが、観てみると確かに人生経験豊富な方が感じることが多いかもしれません。母娘の話ではありますが、結構父の存在が大きかったのが意外でした。1300円。


キネカ大森にて鑑賞 上映時間:2時間

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