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zoom RSS 『ゆれる』

<<   作成日時 : 2007/02/27 00:55   >>

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上映が始まってからずっと観たい観たいと思い続けて半年以上。やっと観に行くことができました。しかもたて続けに2回。2回目も全く飽きることなく観られる計算し尽くされたストーリーとリアリティのある演技。見事です。
2回目は『パビリオン山椒魚』との2本立てで観ました。コミカルで意味不明な『パビリオン〜』のすぐ後に、重く考えさせられる『ゆれる』の鑑賞。そのギャップの大きさに、なかなか頭が切り替わらない。2本立ての面白いところです。


東京でプロのカメラマンとして活躍する弟・猛と地元で家業のガソリンスタンドを継いでいる兄・稔。二人の微妙な関係と心の揺れを描いたストーリー。

母の葬式のため、久々に実家に戻った猛は、兄・稔が継いでいるガソリンスタンドで幼馴染の智恵子が働いていることを知る。葬式が終わり、スタンドに顔を出した猛は、兄と智恵子の親しげな姿にわずかに嫉妬を覚える。夕食を街に食べに行くついでと言って、智恵子を車に乗せ家まで送る猛だったが、そのまま家にあがり、関係をもってしまう。

翌日、子供の頃家族で何度も行った渓谷に3人で遊びに行く。裸足になり、川で子供の様にはしゃぐ稔。猛がその姿をカメラにおさめる後ろで智恵子は「一緒に東京に行きたい」と言い出す。猛はうまくはぐらかし、景色を撮るため吊橋を渡りに行く。橋を渡る猛の姿を下から眺めていた智恵子は、「私も渡りたい」と歩き出す。高い所が苦手な稔も、智恵子を追いかけ一緒に渡り始める。
橋の中ほどで、怖さのあまりしがみつく稔を、智恵子は「触らないで」と思わずふり払ってしまう。不安定な橋の上でもつれる二人。次の瞬間、智恵子が激流の中に転落。成す術なくその場にうずくまる稔。遠くから一部始終を見ていた猛。
事件なのか、事故なのか。裁判が続く中、ついに猛が証言台に立つ。


兄弟の関係を中心に据えたのが心憎い設定でした。子供の頃は仲がよくても、成長し大人になり生きる道が別々になるにつれ、気を使うあまりすれ違いがあるのではないかと思えました。これが姉妹だったら、親子だったら、ここまでハマる設定にはならなかったと思います。


実家で暮らす稔は、父親と二人暮しになり、炊事洗濯までこなしていた。長男だから仕方ないと頭ではわかっていても、心の隅では東京で自由にかっこよく生きる猛を羨ましく思っています。
一方猛は、カメラマンとして忙しく充実した日々。久々の帰省で地元を見て、改めて自分がここにいなくてよかったと安心するとともに、田舎が嫌で飛び出したことをどこか後ろめたくも思っています。
猛は稔を信じていたように描かれているけど、猛は稔をさげすむような気持ちを以前から持っていたように感じます。


智恵子に好意を持っていた稔は、猛に惹かれていく智恵子の心の動きを敏感に感じ取ります。奪われたくない、そう強く思っていても優しい性格の兄はそれを口に出すことはできません。渓谷で、猛の後を追う智恵子に必死で付いていく稔は、不器用すぎてかわいそうになりました。


優しく温厚なはずの兄が、本当の心の内を表すのは刑務所に入ってから。
「俺とお前はどうしてこんなに違うの?」
子供の頃から蓄積された弟への嫉妬や僻みともとれることばが次々に出てきて、前半の穏やかな表情からはとても想像できない生々しい兄の本音が現れます。

稔の言葉に揺らぎ始める猛の心。兄は本当にやっていないのか?その疑問に対し、稔は更に辛辣なことばを浴びせます。
「お前は人殺しの弟になりたくないだけだよ。」
「お前は昔から人を信じない。」


最初、猛は証言台で嘘を述べたのだと思いました。稔から投げつけられたひどい言葉の数々と、その言葉がどれも的を得ているのに受け入れられない自分にショックを受け、本当は稔は智恵子を助けようと手を差し伸べたのに、それを突き落としたと猛は嘘を言ったのだと思いました。
でも、この映画を絶賛していた友人は、真相は描かれていないからわからないけど、ひどい事を言われて兄に対する歪んだ気持ちが出てきて、それが突き落としたという表現に結びついたのではないかと言っていました。突き落としたと思いたかったと。なるほど。心の微妙な揺れというものは読み解くのも難しい。探るようなやりとりは苦手なタチなので、とても参考になります。


血が繋がっているいないに限らず、関係を維持していく上で言ってはならないことばがあると思います。それまで保たれていた危うい関係がそのことばによって崩れた時、人間の本性、エゴが出てくるものなのだなとしみじみ感じました。
失ってしまった信頼関係を取り戻せるのか。最後は稔のどっちともつかない笑顔で終わりますが、いい方に転がる事を願いたい。
人を信じる・信じないはそもそも自分の気持ち次第。人を信じると決めたその自分を信じ行動できるか、そこが大事だと思いました。


兄と弟に焦点が絞られていて、微妙な「ゆれ」は強く伝わってきたのですが、スタンドのアルバイトが「稔さんを俺たちに返して下さい。」と言うように、そこに存在しているのは二人だけでなく、親や仕事仲間や多くの人が関わる中で、私情に流され偏った証言をした猛の行動はちょっと極端だったかなという気もします。


倒れた徳利から足に滴る日本酒や、二層式洗濯機から取り出される洗濯物の絡み具合など、生活の臭いがしてきそうな細かいシーンが多く、女性監督ならではだなと思いました。
本題とは少しずれますが、実家を継いで35歳にもなる男性が別々に暮らす弟に対して妬む気持ちを持ち続けるのか、東京で成功し立派に生活するカメラマンが、久々に地元に帰ってきて幼馴染と関係をもつ気になるのか、28だか9になる女性が一緒に東京に出たいと男にすがりつくか、といあたりは少し気に掛かりました。もう少し若ければ別ですが、そろそろ諦めや受け入れが出てきてもいいような年代な気がします。とはいえ、そんな細かいところは内容で十分帳消しになっていて、見終わった後、客観的にも主観的にも色々考えられる作品なので、1800円払っても観る価値はあります。


TOHOシネマズ六本木ヒルズ、シネマ・ジャックにて鑑賞 上映時間:1時間59分

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